がん医療の向上を目指して、リアルワールドエビデンス(RWE)の可能性を切り拓く

リアルワールドエビデンス(RWE)を活用し、臨床に応用する際に取り組むべき3つの重要な課題とは。そして、現在進行中のパンデミックは、こうした課題に対してどのようなのアプローチを示すのか。

2021年 1月

Blog Post 2101 Unlocking The Potential

2021年の最初の月を終えた今、多くの課題や未知の出来事に遭遇した2020年を振り返り、Syapseチームが成し遂げたことに思いを馳せています。組織として団結し、革新的なソリューションを構築し、組織の壁を排し、お客様ががん患者により良い治療を提供するための洞察およびエビデンスを届けることに注力したことを誇りに思います。

リアルワールドエビデンス(RWE)は、がん治療を発展させる大きな可能性を秘めています。この事実は、リアルワールドデータ(RWD)に関する話題 およびRWDへの投資が増えていることにも反映されています。RWEの可能性を最大限に引き出し、臨床へ応用するには、3つの重要な課題に取り組む必要があります。

  • 最も重要な課題を解決に導くことができるリアルワードデータを得る
  • 質の高いデータを有用なリアルワールドエビデンスへと発展させる
  • リアルワールドエビデンスを臨床に応用し、患者アウトカムを向上する

最も重要な課題を解決に導くことができるリアルワールドデータを得る

リアルワールドデータと言っても、一様ではありません。リアルワールドデータは、データが捉えることができる一部の医療従事者が担当する医療を映し出しているとも言えます。リアルワールドデータに携わる会社の多くは、独立したがんクリニック(他の専門分野や入院施設とほぼ連携のない外来クリニック)からデータを入手しています。一方、当社のSyapse Learning Health Network™には、米国最大規模の、複数の病院から構成されるヘルス・システムが多数参加しています。他のデータソースから得られるリアルワールドデータでは、これらのヘルス・システムがカバーする、全米50%以上のがん患者に関する診断、検査、治療の実態をとらえきることができていないのが現状です。ヘルス・システムは、自身のネットワークに入院施設があり、様々な専門家を抱えているため、リアルワールデータから包括的なペーシェントジャーニーに関する洞察を導き出すことができます。Syapseはこのような大規模なヘルス・システムと提携しているため、大規模な医療機関における診療実態を反映した、より深く、より広いリアルワールドエビデンスを創り出し、他のデータソースから得られるリアルワールドデータでは解決に導くことが難しい課題に対処することができます。

現在進行中のパンデミックによって、昨年3月以降、がん患者の来院、診断、手術、ゲノム検査数が激減して、診療パターンが大きく変わりました。パンデミックが落ち着くと、進行性がん患者およびCOVID-19既往歴を持つ患者の増加が見込まれます。大規模な医療機関において、がん診療がどのように変化しているかを理解することは、今後の「ニュー・ノーマル:新常態」に備えるためにすべての関係者にとって非常に重要です。さらに、多くの研究では、COVID-19患者の入院歴を含む病歴を考慮する必要があります。Syapseは、当社のプラットフォームを使用して、そして米国食品医薬品局(FDA)との共同研究を通じて、がん治療や既往症がCOVID-19のアウトカムに及ぼす影響に関する研究をすでに行っています。パンデミックが収束に向かうにつれて、反対にCOVID-19感染歴が、がん患者にどのような影響を与えるかを理解することも同じく重要です。

質の高いデータを有用なエビデンスへと発展させる

リアルワールドデータは基盤となるものですが、データそのものが有用なリアルワールドエビデンスを創り出すわけではありません。データを有用な情報へと発展させるためには、適切なリアルワールドデータサイエンス アルゴリズムを使用する必要があります。大規模なリアルワールドデータセットの収集に投資してきた関係者たちから、膨大なデータがあるものの、エビデンスに欠けるという話を何度も耳にしました。

Syapseでは、質の高いリアルワールドデータを有用なリアルワールドエビデンスに発展させるため、提携機関と緊密に協力しています。FDAとの研究協力協定を通じて、FDAの研究者と共に高品質なデータを有用なリアルワールドエビデンスに発展させるための分析手法を開発・検証しています。検証された分析手法は、当社のセルフサービス型SaaS(Software as a Service、インターネット経由でソフトウェアをサービスとして提供)製品と共同観察研究の両方に使用されているため、当社の提携医療機関にご活用頂くことができます。

前回のSyapse Precision Medicine Councilにおいて、FDA主席副長官のAmy Abernethy医師が指摘したように、今回のパンデミックによって、このような状況に対応するために必要な高度なリアルワールドデータ サイエンス メソドロジーの開発に、どれだけの作業が必要なのかが明らかになってきました。例えば、診療パターンの急激な変化は、時間性や疾患の歴史をどのようにメソドロジーに反映させるかという課題を提示しています。今後もSyapseはFDAとのコラボレーションを継続していきたいと思っています。

リアルワールドエビデンスを臨床に応用し、患者アウトカムを向上する

医療エコシステム全体に変化を促すためには、リアルワールドエビデンスを活用する必要があります。新しい強力なエビデンスが創られてから、その洞察が臨床現場に完全に浸透するまでに時間がかかり、患者アウトカムを向上する機会を逸することがよくあります。

提携医療機関は、RWEを活用して最高品質のエビデンスに基づくケアを提供し、現行の標準では十分ではない場合には新しいエビデンスを創り出すことで、患者アウトカムを向上しようとしています。Syapseは、質の高いRWDを収集して有用なRWEを創り出すだけでなく、提携医療機関と共に、洞察を臨床へ応用することに力を注いでいます。

パンデミックが発生した当初、当社のゲノム・分子検査ダッシュボードが、皮膚および卵巣などを含む全ての疾患における検査率の低下をリアルタイムで示しました。提携医療機関と協力して、最も影響を受けた患者層を特定し、これらの傾向の根本的な要因を明らかにしました。そして医療機関が患者さんをフォローアップできるよう、患者リストを作成しました。患者が医療機関に戻ってくるにつれて、すべての患者にできる限り質の高いケアを一貫して提供するためには、対象を絞ったアプローチの重要性は増すでしょう。

最後になりましたが、私はSyapseのチームを率いることを光栄に思うと同時に、これから訪れる大きなチャンスを楽しみにしています。完全なリモートワークに移行してから1年が経とうとしていますが、当社のミッションがバーチャルな環境でいかに深く浸透しているかを実感していて、身の引き締まる思いです。がん患者は待ってはいられません。Syapseは、提携医療機関と共に引き続き全力を尽くしてまいります。